【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
 
―――ピンポーン ピンポーン


『まもなく1番線に電車が……』


セイジとの楽しい会話は長くは続かない。ちょっと話すと、あたしが乗る電車がもうすぐホームにやってくる。


「ごめん、セイジ。電車来ちゃった……」


名残惜しい気持ちを胸の奥にしまって、あたしはホームに向かう。


「……うん。気をつけて帰れよ。じゃあな、おやすみ」


セイジもあたしと同じように思ってるんだ、寂しそうな声で“おやすみ”を言った。


「おやすみ……セイジ。また電話してね?」

「おぅ!また電話する」

「うん」


あたしの前でちょうど電車が止まったとき、セイジからの電話も終わった。





本当は、電話じゃなくて直接セイジの目を見て話したい。メールでもなく、電話でもなく、ちゃんとセイジを見て話したい。


セイジは“もう30だしなぁ”なんて言ってたけど、あたしだってもう27歳。


そろそろ恋愛だけじゃ……って年齢にさしかかってる。


電車で見かけた若いカップルが、あたしにはなんだか切なかった。
 

< 7 / 52 >

この作品をシェア

pagetop