【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
―――ピンポーン ピンポーン
『まもなく1番線に電車が……』
セイジとの楽しい会話は長くは続かない。ちょっと話すと、あたしが乗る電車がもうすぐホームにやってくる。
「ごめん、セイジ。電車来ちゃった……」
名残惜しい気持ちを胸の奥にしまって、あたしはホームに向かう。
「……うん。気をつけて帰れよ。じゃあな、おやすみ」
セイジもあたしと同じように思ってるんだ、寂しそうな声で“おやすみ”を言った。
「おやすみ……セイジ。また電話してね?」
「おぅ!また電話する」
「うん」
あたしの前でちょうど電車が止まったとき、セイジからの電話も終わった。
本当は、電話じゃなくて直接セイジの目を見て話したい。メールでもなく、電話でもなく、ちゃんとセイジを見て話したい。
セイジは“もう30だしなぁ”なんて言ってたけど、あたしだってもう27歳。
そろそろ恋愛だけじゃ……って年齢にさしかかってる。
電車で見かけた若いカップルが、あたしにはなんだか切なかった。