【バレンタイン短編-2009-】 俺のココ、あいてるけど。
 
それからしばらくして、1月の最後の週末、とうとうセイジの引っ越しの日がやってきた。


手伝いに行きたいけど、あたしは今日もスーパーの仕事。家族旅行に行くことになったパートさんの穴埋めでシフトに入ることになっていた。


予定では久しぶりに会えるはずだったんだ、1週間前までは。だからセイジにもそう連絡していた。


なのに、蓋を開けてみれば3日前にシフト変更を頼まれ、断りきれないあたしは泣く泣く仕事のほうを取った。


「ごめんね、セイジ。引っ越し、1人で大丈夫?」


仕事に出る前、慌ただしく準備をしながらセイジに電話。行けなくなったって話してから、あたしは何回“ごめんね”って謝ったんだろ……。


「気にすることないよ。男の引っ越しだぞ?大荷物だったらキモいだろ?」


あたしの口から何度となく繰り返される“ごめんね”に、セイジは電話の向こうで明るく笑った。


「だって……楽しみにしてたんだもん。髪も切ったし新しい服だって……」

「俺のことはいいんだって。そうやって人のために頑張れるミクが俺は好きなんだからさ」
 

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