私だけのスーパーマン
「あーっ!もうっ」
小さく叫ぶと私は本を閉じる。
ダメだ…荒川さんの言ったことが気になって本に集中できない。
机に伏せて目を閉じる。
『儚い恋』
荒川さんはなんであの花を飾るんだろう。
普通なら、目を背けたくなるようなことなのに。
『あれ?珍しいですね。
本に集中できないなんて。』
背中から声がして。
顔を上げるとやっぱり
「…………荒川さん…」
湯気のたったコップを持った荒川さんが立っていた。
『集中できないなら…飲みます?
これ、荒川泉スペシャルブレンドコーヒーです。』
はい、と言ってコップを持たされる。
「って…なんですか、それ」
荒川泉スペシャルブレンドコーヒー
長い。そのネーミング、長すぎる。
おもしろくて私はケラケラと笑う。
『そんな笑わないでください。
一応、司書仲間には大好評なんですから』
荒川さんは照れたように笑いながら言う。
一口コーヒーを飲むと口いっぱいに苦さが広がる。
いい具合の苦さ。
「……おいしい」
そう言うと荒川さんは嬉しそうに笑った。