私だけのスーパーマン






『すみれさんはオトギリソウって知ってますか?』


私は首を横に振る。


聞いたこともない花だ。



『黄色の小さな花を咲かすんです。

でも、昼間しか咲きません。
寿命は1日』


そんな花があるんだ。

全然知らなかった。




『オトギリソウの花言葉は秘密』


『秘密』かぁ…



『世の中には、知らない方がいいこともあるんです。

すみれさん、あなたは知らない方がいい。


きっとこのことを話せば俺を見る目が変わってしまう。

俺は、このままがいい。


だから…言えません。』


泉さんは最後にふっと笑った。



「そうですか。

変なこと聞いてしまってすみませんでした」


私はお金を置いて店を出た。



きっとあれは触れてはいけない部分だった。

私はそこに触れてしまった。


泉さんのパンドラの箱に私は…触れてしまった。








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