私だけのスーパーマン
「泉さん…1つだけ、いいですか?」
その日の午後。
全ての講義が終わった私はいつも通り図書館へ来た。
泉さんはいつもの場所で本の整理をしている。
汚くなんてなっていないのに。
『どうぞ』
バーのときとは違う格好。
メガネをかけておじさんくさいベストなんて着て。
あまりの差にとても同一人物とは思えない。
「前に…私が不倫してること、知ったとき言ったじゃないですか。
別れろ、なんて言わないって。
どうしてですか?
自分のお父さんがその…不倫してたのに。
普通だったら別れろ、って言うんじゃないんですか?」
泉さんは手を動かしたまま言う。
『分かってるからですよ。
別れろって言っても別れられないこと。』
私は首を傾げる。
泉さんの言ってること…よく分からない。