私だけのスーパーマン





約30分後

バーの扉が開いた。


それと同時に聞こえてくる泉さんの声。

でもさっきまでの声色じゃない。


少し…硬めの声色。


きっと奥寺さんが来たんだ。


急にドキドキの速さが増す。




『久しぶり』

そう声がして頭をあげた。



「お久しぶりです」

自然に硬くなる言葉と笑顔。


いつも通りを装うのは想像以上に難しかった。



『初めに言っておくね』

私の隣に座った奥寺さん。


そうすると急に頭を下げた。

テーブルに頭がつくくらい低く頭を下げる。



『この間は…怒鳴ったりぶったりしてごめんね』

なんだか気が抜けてしまった。



「いや…そんな…気にしてないですよ」

まさか謝られるだなんて思っていなかった。

カウンターの向こうにいる泉さんと鏡越しに目が合った。


泉さんは微笑む。

どうやらこの光景は丸見えらしい。



『じゃあ話すよ。ホントのこと』

顔をあげた奥寺さんは真剣そのものだった。


胸騒ぎが大きくなる。

グラスを持つ手が震えた。


そして奥寺さんはゆっくりと口を開いた。









< 186 / 234 >

この作品をシェア

pagetop