私だけのスーパーマン
約30分後
バーの扉が開いた。
それと同時に聞こえてくる泉さんの声。
でもさっきまでの声色じゃない。
少し…硬めの声色。
きっと奥寺さんが来たんだ。
急にドキドキの速さが増す。
『久しぶり』
そう声がして頭をあげた。
「お久しぶりです」
自然に硬くなる言葉と笑顔。
いつも通りを装うのは想像以上に難しかった。
『初めに言っておくね』
私の隣に座った奥寺さん。
そうすると急に頭を下げた。
テーブルに頭がつくくらい低く頭を下げる。
『この間は…怒鳴ったりぶったりしてごめんね』
なんだか気が抜けてしまった。
「いや…そんな…気にしてないですよ」
まさか謝られるだなんて思っていなかった。
カウンターの向こうにいる泉さんと鏡越しに目が合った。
泉さんは微笑む。
どうやらこの光景は丸見えらしい。
『じゃあ話すよ。ホントのこと』
顔をあげた奥寺さんは真剣そのものだった。
胸騒ぎが大きくなる。
グラスを持つ手が震えた。
そして奥寺さんはゆっくりと口を開いた。