私だけのスーパーマン
「なんで泉さんがここに…?」
カウンターの席に座る。
『今日から雇われの身なんだ。
みんなには内緒だよ?』
泉さんは唇に人差し指を当てる。
やっぱりいつもと違う。
そんな泉さんにドキドキとうるさくなる心臓。
どうしちゃったんだろう…私。
「でも…いいんですか?
ここで働いて…」
んーどうだろ…と、呟いて唸る泉さん
『ま、いいんじゃないかな?
それにここのマスターの頼みは断れないから。』
泉さんは接客中のマスターに視線を走らす。
『で、すみれさん。あの方は…?』
泉さんの視線がマスターから奥寺さんに向く。
ここは…なんて説明するのが正しいんだろう。
まさか
「不倫相手です」
とは、言えないし…
「………知人です」
この言葉はウソではないし…まあいっか。
『ふ~ん。そうなんだ』
と、言う泉さんの視線は痛くって。
きっと泉さんは分かってる。
奥寺さんがただの『知人』ではないこと。