私だけのスーパーマン





『アイツさ、この歳になって失恋してやんの。

んで、風邪引いちゃったワケ


アイツもまだまだ子どもだよね』


マスターは話ながらもずっと笑っていて。

私は愛想笑いを浮かべていた。


泉さんの好きな人って…誰なんだろう。

失恋って…誰に?


だいたいあんな素敵な男の人がフラれたワケ?

信じられないなぁ…



「つかぬこと伺いますけど…その泉さんが好きだった人って…??」

マスターはニヤッと笑う。



『それは言えないな。

でも泉の近くにいる子だよ。』


泉さんの近くにいる人…?

じゃあ私はきっと、その人のこと…知らないな。


だって泉さんのプライベートはほとんど何も知らないから。



知ってることはマスターと仲がいいこと。

それだけしか知らない。



あれ?

私…どうしたんだろう。


なんで…泣きそうになってるんだろう。


別に、悲しいことなんて何もないのに。



私はお金を払い店を出た。


家に帰ろう。

今の私はおかしい。


今の、じゃないか。

最近の、私はおかし過ぎる。






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