私だけのスーパーマン
『はぃ?今、なんか言いました?』
振り向いた泉さんの顔はちょっと怖くて。
私の頬の筋肉が硬直する。
『分かってないなぁ…すみれさんは。
確かに、さっきの言葉はウソだよ。
でもさ、俺…バカだから。
自分の幸せより…
その人の、好きな人の、幸せのほうが大切なんだ。
だからもう、気にしないで。
それじゃあ…失礼します』
口調が、バーにいるときと同じで。
私は泉さんの本性を引き出してしまった。
言いたくないことを、言わせてしまった。
きっと…心の中じゃ、泣いているのに。
どうしようもない涙を
どうしようもない苦しみを
我慢しているのに。
私はなんてバカなんだろう。
遠ざかっていく泉さんの背中に呟いた。
「ごめんなさい……」