私だけのスーパーマン





「この花…キレイですね」

1輪の花を置いているのは荒川さん。


『知ってますか?この花の名前』

私は首を横に振る。

なぜか荒川さんは花に詳しい。


『アネモネって言うんです。』


「アネモネ…」


『花言葉は儚い恋、恋の苦しみ』


「えっ?」


驚いてそんな声が出た。


『儚い恋』『恋の苦しみ』

荒川さんは知らないはずなのに、私と奥寺さんのことを知っているみたいで。

不思議な気分だ。



『これ…僕のキモチですよ』

ふっと笑った荒川さん。


「僕のキモチ…?」

首を傾げると本の整理をしながら


『そのままです。

儚い恋…僕の恋は儚いんです。』


荒川さんはそう言った。


『ごゆっくり』


微笑みを私に向けるとすぐに背を向け、どこかへ行ってしまう。


どういうことだろう。


『僕の恋は儚い』

確かに荒川さんはそう言った。


荒川さんも、辛い恋をしているんだろうか。


私のような恋をしている、

そう…言うんだろうか。


まさか…荒川さんに限ってそんなはずがない。







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