君への距離~あなたに一番近い場所~
「バナナクリームはやっぱないねー」

杏は残念そうにふつうのクリームパンを手にとった。




「あれ生協でしか見たことないなー」
翼は焼きそばパンを手にとった。





「杏ー!ついでに翼も!!」




「ついでって…」


アツシだった。


アツシは雑誌コーナーに一人でいた。



杏は久しぶりのアツシにじゃれつく。

翼は何気なく雑誌を見渡すと、ふと一冊の雑誌に目が止まった。




緩いパーマとメッシュが入った女みたいな男が表紙のおしゃれ雑誌。

WAVE…


(聞いたことある…)



「あ!」

翼はページをめくっていく。



そして手が止まる。






いろんな街のスナップ、その名古屋の見出しの下に、一番大きく載せられた杏と翼のぎこちない笑顔。





「ニヤニヤすんな!」アツシが言った。

「杏ー!翼がやらしい雑誌見とるー!!」




「え~!!」
レジで翼の財布で会計していた杏が振り返る。



「違う違う、ほら…」




翼は誇らしげにアツシに見せて言った。





「かわいい彼女だろ?」




< 125 / 152 >

この作品をシェア

pagetop