君への距離~あなたに一番近い場所~
「もう無理ー、負けた!降参!」

翼が肩で息をしながら先を走る杏に言った。



「あはは、部屋までダッシュー!」



「え~!!」



「朝練、朝練!…わぁ!!」



杏は膝が抜けてその場にしゃがみこんでしまった。


「ほら、またサポーターなしで走るから!」
翼が駆け寄る。



「またマサキみたいなことゆー!!」



「あはは、気をつけてよ。…はい!」



杏の前に翼がしゃがむ。



「…ありがと」


恥ずかしくて小さな声でお礼を言うと、おそるおそる翼につかまる。




軽々と翼は立ち上がり歩きだした。


「あ―緊張する!」
杏が言う。



「なんで?」



「近いから!くっついてるから!」



「今さらー、


昨日はこんなもんじゃなかったのに?」


翼がゲラゲラ笑う。



杏が暴れる。


「ごめん、ごめん!」


「翼くんのバカー!これを言ったのがマサキやリョースケやシオやアツシだったならボコボコにしてたー!!」



「ごめん、ごめん!!ウソついた!



僕だって緊張しないわけないよ。」





杏と翼は大騒ぎしながら歩いていた。





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