君への距離~あなたに一番近い場所~
胡羽の葬式のあと、しばらく大阪にとどまっていた。



自分の身体の半分をもぎとられたようで、すべてが不安定だった。


妻も、俺もおかしくなって毎日のようにケンカしていた。


お互いに当たり散らして、責任のなすりつけあいをした。



妻は実家に帰り、俺は仕事をクビになった。


逃げるように名古屋に戻り、借りていたマンションを解約して家賃の安い知多半島の田舎街に越した。







「おとんラーメン好きやんな?胡羽も好っきやで!」



そんな胡羽の言葉だけで俺は小さい店ながらもラーメン屋を始めた。




貯金をはたいて、それなりに勉強もした。



何しろ、ラーメンはおろか料理の経験もあまりなかったのだから。






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