君への距離~あなたに一番近い場所~
「こんにちわ-!」



大きな黒目がちの瞳に肩までの髪。


小柄で細くて、人懐っこい笑顔…



(胡羽…?)



「おっそいぞ-!杏!!」

シオが言った。



杏、っていうのか…。



「…い、いらっしゃい!」


「こんにちわ!」


杏がにっこりと笑った。




後からマサキとリョースケが入ってきた。


「ごめんなー。寝すぎた!」

と、リョースケ。


「やっぱな~」
ケンイチがケラケラ笑う。


その隣で杏も笑う。

「みんなアラーム気づかないの!」


「練習のあとちょっと昼寝しよーって言ってたのになぁ?」

マサキ。




「寝過ぎじゃ!」


シオが笑う。





俺は目を細めて五人を見ていた。



聞けば、みんな大学一年生。

18歳…、胡羽が生きていたら同い年だった。



「おじさん、ラーメンめちゃめちゃおいしいわ~」


杏が笑顔でそういった。


「だね!おっちゃんやるなぁ-!!」

と、杏とケンイチが俺に言った。


「そうか~。いっぱい食べて大きくなりや!!」


杏とケンイチは目を見合わせ、ゲラゲラ笑った。



「おっちゃんなんか父ちゃんみたいだなぁ!」


「パパー」


パパー パパー パパー…



二人は笑いながら連呼した。



(おとーん!おとーん!)



無邪気に笑う杏の姿に胡羽がたぶって、俺はほんとに泣きそうだった。







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