君への距離~あなたに一番近い場所~
「お休みかなぁ?」



しまった扉の前で杏は残念そうに言った。



「のれんもないなぁ…」

翼はただと休みだとはどうしても思えなかった。



「パパ、風邪でもひいたのかなぁ?」










かん吉は声がするほうへゆっくり顔を向けた。




そして立ち上がると


(今日はお休みや~)


そう言おうとゆっくりと歩いて言った。



「パパー?」


杏の声がした。



かん吉はガラガラと扉を開けた。



その勢いに杏はびっくりしてしばらく目を丸くしていたが、すぐににっこりと微笑んだ。

「顔色悪いよ?

無理しんときん!


パパ、歳なんだからさ!!」


意地悪くニヤニヤ言う杏。




「…胡羽ぇぇ!!」



かん吉は杏をギュッと抱き締めた。




―ジュラシックパーク乗りたいー!!


よく胡羽とユニバーサルに行ったっけ…


―よっしゃ、おとんがいっしょに乗ったるわ!


―え~!大丈夫なん?
おとんもう歳なんやから、無理しんでなぁ~





涙が後から後から込み上げてきては溢れた。






杏はびっくりしたが、かん吉が落ち着くまで静かに微笑んでいた。


翼も暖かい眼差しで本当の親子のような二人を見つめていた。





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