君への距離~あなたに一番近い場所~
五条は全治2週間の怪我だった。

自分が杏にしたことがあるのでかん吉を訴えることなんて到底できず、結局大きな問題にはならなかった。



陸上はまだ続けている。



でももう杏は気にしていなかった。



「全国行って一番速く走ったる!」

いつか杏は翼にそう言って笑った。


「全国の決勝までいったらごほうびとして翼くん、見に来てね!!」



「…どうかなぁ~」



「え!?」
杏の顔が曇る。


「野球の全国大会とかぶんなかったら行くよ!」



翼はそういった。


二人は顔を見合わせる。



「まだどっちも決まってないのに~」

杏のほうが先に笑い出した。


「日程違ったら杏ちゃん全国大会はしごしなきゃね!」


翼もゲラゲラ笑い出した。



「だからまだ予選大会も始まってないって!」



「いや、大丈夫だね。」


「さすがレッドのエースは言うことがちがうね!」
杏が皮肉っぽく笑う。


「よく言うよ!春の東海大会、誰にも言わずにぶっちぎり優勝したのは誰だっけ~?」
翼も皮肉を返す。

そしてふと優しい声で言った。
「なんか今、負ける気しないから。」




杏はふわっと微笑み空を見上げた。



高い空に微かな秋の香りが混じっている気がした。




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