君への距離~あなたに一番近い場所~
「…翼くん?」

杏の声が震えている。


大きな手が強い力で杏の口をふさぐ。



(翼くんじゃない!!)




杏の必死の抵抗でも男はビクともしない。



強い力で押さえ込まれ、あっという間に組み敷かれてしまった。



男の顔が暗闇の中でぼんやりと、でもはっきりと分かった。



(五条先輩…)


陸上部の杏と同じ短距離の選手だ。


試合でも男子のエースとして活躍している頼りになる先輩だった。




「おとなしくしててね、杏チャン…」

五条がニヤリと笑う。




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