君への距離~あなたに一番近い場所~
朝になった。



朝日が差し込んで杏がゆっくりと目をあける。



(翼くん…)


翼は杏のベッドの横にあぐらをかいて座りながら眠っていた。



杏は微笑みながら自分のかけていたタオルケットを翼の肩にかけてあげた。




「ん…」



「まだ寝てていいよ」
杏が優しくささやく。



しかし翼はすぐに起きた。


「杏ちゃん…、誰にされたの?」


杏はびっくりして首をふる。

翼は杏の肩をつかんで、座らせる。


「杏ちゃん!誰に…」



「いやっ!何も聞かないって言ったじゃん!」

杏は翼の手をふりほどこうとする。


翼ははなさない。


「リョースケにもマサキにも警察にも…絶対誰にも言わない!犯人が分かるんなら僕が…」



「翼くんを巻き込みたくないの!!」



翼が杏をぎゅっと抱きしめる。


「巻き込めよ!




ぶっ飛ばしてやる…


杏ちゃんの何十倍も何百倍も苦しめてやる…



だから…」



翼の口からこんな乱暴な言葉を聞いたのは初めてだったので、杏はしばらく黙りこんだ。



「翼くん…痛い」


杏は少し笑って言った。




ハッとして翼は腕の力を弱める。





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