君への距離~あなたに一番近い場所~
(ずるいなあ…)


帰り道、自転車の上でため息をつく翼。



(なんで、なんであんなにかわいいんだろ…)



翼のうさぎと杏のうさぎ。


2つ並んでいたのがうれしくて、


でも実際の二人には距離があって…




『お別れ、しよ』
杏の言葉が蘇る。






「無理だよ…」

ため息に声が混ざって夕暮れの空気に吐き出される。


翼はうなだれた。


後ろに杏が乗っていないだけでバランスがとれない自転車も、



杏がむりに明るく振る舞う姿も、



杏の笑った顔にそっくりなあのうさぎも、




愛しくて愛しくてわけが分からない。





「優柔不断め…」

翼は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。



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