加茂川サンセット
今回のターゲットは室岡、ということだ。

私達の仕事内容はごく簡単なもので私達はターゲットのもとに派遣され、その者の人生を狂わせる、といったものだ。

私の場合は悪い意味で。


人生において幸福と不幸は半分ずつある。
それは私達、蝙蝠のお陰なのだと言いたい。

私は不幸担当だが同僚には幸福担当もいる。
その幸福担当の殆どが、家屋に住み着くことのあるアブラコウモリだ。
家賃代わり、のつもりなのだろうか。


東洋では幸福の象徴とされている蝙蝠だが、まさか不幸に陥れるとは人間も思うまい。

こんな事を考える私は、やはり室岡の言う"変な奴"なのだろうか。


私達は普段蝙蝠の姿でいるのだが、依頼が来ると人間の姿になり派遣される。
依頼はどこから来るだとか、そのような事は聞かされていない。

今回私は室岡と同じくらいの年の女となっている。
この姿で三日間人間世界で暮らし、そして室岡を陥れる。

今まで他人の分まで幸せに生きてきた人間が一気に絶望という底なし沼に突き落とされる、その時の人間の顔を見るため私は"不幸"を選んだ。

世界は平等にならねばならない。
違うだろうか。
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