恋の雪
春の雪
思わず身震いほどの冷たい風が吹き抜けた。
「あーっ寒いっ」
少し大きな声で郷奈(さとな)がそう言いながら、肩を竦める。
それを横で見ながら、友人、尚緒(なお)が笑いながら言葉を発する。
「まあ冬だから仕方ないよなぁ…」
「そーっそーっ去年も寒かったよね」
それに続けて私、茅颯(ちはや)か゛言葉を発する
私たち三人は、去年この櫻瀟(おうしょう)中学に入学し、二年間とも同じクラスなのだ。
何をするにも、3人一緒だ。
「そうはいってもうちは冷え性なのっ!!」
「なおも冷え性だよ?」
「私も体温は低いよー、」
「「嘘付け!」」
なおと郷奈の言葉がハモり思わず笑みをこぼしてしまう。
3人で大笑いをしていると、なおの後ろに一人の男子が立っていた。
「煌(こう)ちゃん」
真正面に立っていた郷奈がにこりと笑い名前を呼ぶ。
煌はニッと笑うとなおの頭を数度たたいて、私の方を見て「授業遅れんなよ」と言って去っていった。
そういわれて初めて時間を確認する。
ギリギリだった。
慌てて教室に戻って授業の準備をする。
本令とともに、教師は入ってきた。
授業は、数学でよりによって今日はあたり番号だった。
周りをクルリと見渡して思わずはあ、とため息をつく。
だぁれも聞ける人が居ないんだよね…。
数学が極端に苦手な私にとって、この状況は拷問でしかない。
四方八方が男子で、隣は学年でも有名な不良グループの一人。
後ろは、対立している不良グループの一人。
周りに話せる女子も男子すら居ない。
――神様、何でこんな試練を。