スカーレットの雪

「だって恥ずかしいんだもんっ」、そう言うあたしの上で、奏ちゃんが笑った。多分、話してる内容がわかったんだろう。

「もぅ、切るからねっ」
『はいはい。デート楽しんでね~っ』

携帯を切ると、奏ちゃんが聞いてきた。

「友達?」
「うん、亜依。明日見る予定の映画ほぼ満席なんだって」
「うそ、まじ?」
「でも亜依が予約とってくれるみたい」
「そっか、よかった」

奏ちゃんは映画好きで、週に一回は映画館に足を運んでいる。自分が女だったら絶対水曜日は映画の日にしてると、豪語する程だ。

ほんとは奏ちゃんは少し難しい映画が好きなんだけど、あたしがそういうの見るとすぐ眠くなっちゃうから、だから明日の映画はラブストーリーを選んでくれた。

「明日見る映画って、どんなやつだっけ?」
「ほら、最近話題の小説あったじゃん?過去にタイムスリップする話。あの映画化だよ」
「あぁ、わかった!明治時代にタイムスリップしちゃうんだよね」

それは最近ブームになった小説。主人公の女の子が、ひょんなことから明治時代にタイムスリップして、その時代の人と恋に落ちる。ありきたりと言えばありきたりなストーリーだ。

でもその純愛に、多くの人が涙した。
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