スカーレットの雪

…マンションの前に、もう奏ちゃんは来ていた。いつもそう。あたしより少し早く来て待っててくれる。

「かーなちゃんっ」

ぴょこんっと階段から飛び降りて、奏ちゃんの元に駆けていった。あたしの方を向いた奏ちゃんの口から、白い息がこぼれる。

「おはよ、緋那」
「おはよ!今日凄い寒くない?」

ブルッと体を震わせるあたしの頭にポンッと手をのせて、「新しいマフラーだ」と呟く。

この奏ちゃんの笑顔が、あたしは一番好き。

「こないだ奏ちゃんと行ったお店で買ったんだよ。あそこ可愛いね!」
「姉ちゃんに付き合わされてよく行くんだよね。また行こうな」

マフラーを口許まで引き上げながら奏ちゃんは言った。あたしはそのマフラーに目をやる。

「…あたしが編み物できたらなぁ」
「え?」
「そのマフラー、もうぼろぼろでしょ?新しいの編んであげたいのになぁ」

奏ちゃんが巻いてるマフラーは、あたしが中学生の時にあげたクリスマスプレゼントだった。自他共に認める不器用なあたしは、もちろん編み物なんてできない。紺色のそれも、なけなしのお小遣いをはたいて買ったものだった。

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