スカーレットの雪
「いいよ、そんなの」
「でももう色褪せてるよ?」
「いいの。俺が気に入って着けてるんだから」
そう言われるとやっぱり嬉しくて、あたしははにかむ様に笑った。奏ちゃんはいつも、あたしを上手に笑顔にしてくれる。
「寒いな」
「寒いねぇ」
「手つなぐ?」
「え、やだっ!」
「え、何で?」、不思議そうに聞く奏ちゃんに、あたしは寒いのに頬を染めながら答えた。
「だって、学校まで5分の距離だよ?手なんて繋いで行ったら、またみんなに冷やかされちゃうよ」
真新しいマフラーを口許まで引き上げる。これは、奏ちゃんの癖だ。そんなあたしを見て、奏ちゃんは笑った。
「相変わらず照れ屋だなぁ」
「うるさいなぁ」
「わかったわかった。じゃあこれ、手つなぐ代わりな」
そう言って差し出されたのは、小さなほっかいろ。手に取るとそれはもう暖かかった。
「…ありがとぉ」
「いえいえ」
ほっかいろの暖かさが、奏ちゃんの暖かさとかぶる。ほっぺにくっつけると、じんと暖かさが伝わった。
奏ちゃんがいれば寒くない。
奏ちゃんがいれば寂しくない。
奏ちゃんがいれば、あたしは幸せ。