ただ…逢いたくて
宿泊研修の場所に着き、皆楽しそうに降りて行くなか、私は千夏と翔の態度が気になって仕方なかった。


『紗ー季!大丈夫?』

美穂の方が辛いはずなのに心配してくれた。

「ごめんね。なんか気になって…美穂こそ大丈夫?」

『大丈夫だよん♪後で千夏にこそっと聞いておくから大丈夫だよ。せっかくの宿泊研修楽しもうよ』

ニコッと笑う美穂を見て少し安心した。


『今日は夕飯カレー作りをして明日班別行動にする。』

先生が叫んで皆、準備に取り掛かる。


「私何係りだったっけ…」

カレー作りを楽しみにしていた私だったけど今は全然楽しくない。

「はぁー…」

皆がカレー作りをしている所から少し離れた所で座りこんだ。

カレー作りは班別に作るから千夏と翔が気まずくて抜け出してきた。


『おっもーっ!』

坂の下から聞こえてくる声。聞き覚えがある声だった。


『……紗季…。』

千夏だった。野菜係りの千夏は宿泊場所まで野菜を取りに行ってたのだろう。


「…千夏…えーっ…と」

すっと反射的に立った私は何を話したらいいのか口ごもった。

千夏は野菜を置き、ニコッっ笑った。

『なーに、サボってんの!』

「えっ…」

『ちょっと話さない?』

やわらかに笑う千夏はすごく可愛かった。
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