看護学校へ行こう
男が何かからかったときに、

「やだー、もう。やめて～。」

などという発言に弱いらしい。しかし私は、逆に男を恐怖に陥れた。私から離れるかなあと思っていたら、案外私に話しかけてくる男性2名がいた。一人はやせ形のめがねをかけた人。もう一人はわりとたくましい感じの人。前者が24歳で、後者が26歳だ。私は小娘にありがちな、

「私を包み込んでくれる、大人の男の人が好き。」

の部類だった。だから26歳の方とお近づきになりたかった。ところが積極的なのは24歳の方だ。気持ちは嬉しいが、タイプじゃない。なるべく26歳の方を向いて会話していたのだが、話に積極的に加わってくる。そして26歳がトイレに行っている間、24歳は私に言った。

「君ってチャーミングだね。」

昭和の末期といえど、「チャーミング」という言葉は死語だった。嬉しいどころかどん引きである。後にも先にも「チャーミング」などという言葉を使う人を見たのは、それきりだった。

　合コンは終わり、行きたい人だけ2次会へ行くことになった。外泊届けを出しているので、みんな行った。私は26歳にさりげなく接近していった。そしてなんとか一緒の席に座る。が、24歳もくっついてきた。仕方がないので軽く談笑などをしていたら、ダンスタイムになった。24歳は私を踊りに誘う。頑として拒否したら、24歳は一人でフロア中央で踊り始めた。酒が入っているせいか、踊り狂っている。いもたにさんが、

「あの人、高血圧のノリだよね。」

とさめた口調で言った。「高血圧のノリ」とはどういう意味か不明だったが、少なくともほめ言葉ではないだろう。私はますます引いていった。
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表紙・目次

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