看護学校へ行こう
部屋に戻るとかき山が

「どうだった?」

と聞いてくる。

「うん、つきあって欲しいと言われたけど、断った。」

「なんで?好みじゃないの?」

「うん。他につきあいたい人いるから。」

と言いながら、バッグの中からメモをとりだした。今朝26歳がくれた、電話番号のメモである。26歳は「滝谷さん」と言う人だった。さっそく10円玉をたくさん持って、公衆電話のあるところへ行く。この頃はまだ、ピンク色をした、アナログな電話だったから、10円しか使えない。幸い誰も電話を使っていない。メモ帳の電話番号を間違えないように、一つずつ人差し指で、ダイヤルをまわす。電話はすぐに出た。

「はい、滝谷です。」

ああ、ドキドキする。

「あのう、昨日コンパで一緒にいた、中山です。」

すると滝谷さんは、明るい声になった。

「昨日は楽しかったね。どうしたの?」

向こうは多分、感づいているはずだ。でもしらばっくれている。私は話を切り出した。

「あのう、私、滝谷さんのこと好きになりました。つきあってもらえませんか?」
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