看護学校へ行こう
別に高級な食事を期待したわけではないが、レストランくらいは行くだろうと予測した。ところが到着したのはトンカツ屋だった。

「この店、すっごくうまいんだよ!」

ああそうなのと思いながら、無言で入り口をくぐる。その辺は男だ。私も男心がつかめていなければ、向こうも女の子が好きそうなことを知らない。トンカツ屋など、ムードもへったくれもないではないか。

「トンカツ定食二つね。」

滝谷さんは勝手にオーダーする。トンカツかあ、全部食べきれるかなあと心配していたところへ定食がとどく。ボリューム満点だ。脂っこそうだなあと思いながら、一口カリッと食べてみる。お、おいしい!予想外においしい。

「すっごくおいしい!」

「でしょ。ここ、本に載ってた店なんだ。」

結構なボリュームだったが、カツは全部食べた。ご飯はお腹に入る余地が無くて、半分残す。満腹になると、レンタルビデオ屋へ行った。いろいろ選んで、私は「愛と青春の旅立ち」を借り、滝谷さんは「チンピラ」を借りた。ビデオ屋を出ると、少し市内をドライブした。

「カセットにお気に入りの曲入れてきたんだ。」

と滝谷さんはカセットを車のステレオに入れた。レベッカとか久保田利伸とか、まあそれなりに流行の曲が入っている。しかし中に、浜田省吾の「片思い」が入っていた。

「俺、この曲好きなんだ。」

と滝谷さん。あ、そうなんだと思ったが、私は黙っていた。私はハマショーが好みじゃない上、思いっきり重たい曲じゃないか。少なくともデートの時に聴く曲ではあるまい。
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