看護学校へ行こう
だが、のちに滝谷さんのことを思い出すたびに、「片思い」が頭の中で、テーマソングのように流れてくる。すっかりインプットされてしまった。

「苫小牧の港に行ったことある?」

「いや、無い。」

「じゃあ行ってみようか。」

と言うことで、港に行く。だが私は室蘭出身だ。港など見飽きている。港に着いて、一応外に出てみるが、別に目新しいものもないので、すぐに車に戻った。

 3時頃滝谷さんの部屋へ行き、「チンピラ」を観た。柴田恭兵とジョニー大倉が主役の映画だ。自分なら絶対選ばない類の男っぽい映画だし、期待していなかったのだが、これが意外に面白く、結構はまって観てしまった。しかしここでも周囲が見えなくなる私。映画に熱中し、滝谷さんが話しかけても上の空である。いったい私は本当に男とつきあう気があるのか?やがて映画が終わると、もう5時を過ぎている。

「飲みに行こうか?」

と言うので、私は頷いた。てっきり安いパブだと思ったら、結構お洒落なカクテルバーだった。2階建てのバーで、滝谷さんは2階に私を連れて行った。開店直後とあって、店内に客は少なく、2階には誰もいなかった。で、いざオーダーである。カルピス酎ハイでも頼もうと滝谷さんに言ったら笑われた。

「じゃあ、マティーニを頼もうよ。」

よくわからないので、おまかせである。マティーニが渡の強い酒だとはまるで知らなかった。やがてカクテルと軽食が運ばれてきた。三角のグラスに少量のお酒となんかの実が入っている。一口飲んでみる。き、きつい。のどがひりひりする。
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