看護学校へ行こう
「このお酒って、濃いの?」

度数などわからないから、濃い薄いで判断しようとする私。

「カクテルと言えば、マティーニから入るのが常識だよ。」

と滝谷さんは言う。それでそんなものかと思い、一杯を飲み干した。この時点で頭がぼんやりする。滝谷さんは私の分の酒を追加注文した。またマティーニだ。

「あの、違うカクテルってないの?」

「あるけどこれが一番おいしいんだよ。」

だが滝谷さんはほとんどマティーニを飲んでいない。私には飲め飲めと勧めるくせに。しかし私はこれも練習だと思って、頑張って2杯目を飲んだ。この時点で私はグデングデンで、滝谷さんの左肩に頭をもたれていた。店内の曲が、やたら遠くに聞こえる。話をしようと滝谷さんの方を向くと、滝谷さんも私の方を向く。あれ?なんか、雰囲気違うな?なんか、私の話、聞いてないな?そう感じながら、3度目に滝谷さんの顔を見たとき、滝谷さんは私に唇を重ねた。ああ、頭がぼやけて抵抗できない。まだ、まだ早いよ。滝谷さん。会って2度目じゃん。それにいつになったら唇離してくれるの?ぼやけた頭で、唇の感触だけは、はっきり感じた。手足以外で感触を味わうのは、なんとも不思議である。やっと滝谷さんは唇を離してくれた。

「ずるいよ、滝谷さん。私酔っていて、いきなりキスされたら、心の準備が出来てないじゃん。」

「あはは、ごめんごめん。ところでもう帰る時間でしょ?明日も会える?ビデオの続き観ようよ。」

「いいよ。」

「じゃあ、明日は心の準備、してきてね。」

えっ?どういう意味?ぼんやりした頭で考えてたら、寮に着いた。滝谷さんと別れ、寮の部屋に戻ると、私はすぐにベッドに入った。同じ部屋のかき山が、

「ちゅう、具合悪いの?」

と心配してきた。

「だ~いじょうぶ、酔っぱらってるだけだから。」

そう言いながら、深い眠りに落ちた。
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