看護学校へ行こう
 次の日、朝9時に滝谷さんは迎えに来た。夕べのことが思い出された。キスしたときの唇の感触を思い出し、恥ずかしくて滝谷さんの顔をまともに見れない。だが滝谷さんはあっけらかんとして、普通だった。

「ハンバーガー買って、うちでビデオ見ながら食べよう。」

「うん。」

そしてハンバーガーを買い、社員寮へ向かった。「愛と青春の旅立ち」も面白くて、またも滝谷さんを置き去りにしてしまう私。そのうち滝谷さんが、

「こいつはまったく、俺を無視しやがって。」

と私の腕をつかんで自分の方へ引っ張る。

「やあだ、やめてよ~。」

と、しばらく二人でじゃれあっていたら、妙な雰囲気になったので、私は滝谷さんから離れた。

「この前寮の連中が窓から俺らのこと覗いてたんだ。ここじゃ思いっきり遊べないから、ホテル行こう。」

え、え、今なんて言った?ホテル?ちょっと待って、そんな、会って間もないのに。あ、そうか、昨日心の準備してきてって言ったのは、このことだったのか。だけど断ると気まずい雰囲気になりそうだ。もじもじしていると、

「ファミコンもあるよ。思いっきり声だして遊べるよ。」

と言う。これじゃあ子供の誘拐である。だが私は、

「うん。」

と返事をしてしまった。
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