看護学校へ行こう

　学期末テストで最下位をとった私。それから夏休みを、迎えたのだが、さすがに少し勉強した。いったん落ちてしまったものを上げていくのは大変なことだ。勉強しなければいけないことは、山ほどあった。

　夏休みが終わり、学園祭シーズンが近づいてきた。こと芸能関係になると熱くなる私。昨年は寸劇をやった。この頃「昨日、悲し別で」というドラマをやっていた。私はそれをもじって「おととい、一条銀座で」という、大変ベタなネーミングの寸劇の脚本を書いた。「一条銀座」とは、市内にあるアーケード街の事だ。地方の田舎にありがちな、都会をなぞらえて、「銀座」をつけるあたりが、なおいっそうダサさをかもしだしている。ともかく、このダサい「一条銀座」を舞台に脚本を書き、配役も決めた。劇の練習の合間に学園の飾り付けをし、売り物のクッキーやマドレーヌを焼く。私は茶道部にいたから、茶道部での催しもしなければいけなく、準備に放課後9時くらいまでかかってやった。一応寮と学校はつながっているとはいえ、門限が9時15分なので、それまでに終わらせる必要があった。皆、それぞれいろんな才能があった。かき山など食堂にする三年生の教室を飾る担当だったが、テーマは「宇宙」で、大きな絵を描いて壁一面に貼った。その絵を描いているとき、濃紺の絵の具で紙面全体を塗りつぶしたかと思うと、その上からのりをところどころ塗り、おもむろに銀粉をまき散らした。いったい何をするんだと思っていたら、のりが乾いた頃ほうきで掃くと、きらきらした銀河の夜空の完成である。見事な絵だった。

　劇の方では演出は私が担当したが、衣装や表現方法は、個人に任せた。皆張り切って衣装を考え、自らの役作りをした。だがこのとき嫌々やるのが目に見えてわかる子がいた。遠山さんだ。私は遠山さんに、

「牛の役をやって欲しい。顔が見えないから。」

と説得した。遠山さんは渋々承諾したが、少しムッとしており、衣装は私とこーきんで作った。かくして一年生の時の出し物の寸劇は、先輩や教務に大好評だった。遠山さんも頑張って牛を演じてくれた。