看護学校へ行こう
 三日目からは自由行動である。私たちのグループは、東京に宿をとっていた。日中は個人個人で好きに行動することにし、夜みんなで六本木のディスコに行こうということになっていた。私は一人で秋葉原に行ってみた。秋葉原は電化製品が安いとか言われている時代だ。私はせっかく秋葉原に来たのに、レベッカのカセットを買った。そんなもの、北海道のそこいらの店でも売っているというのにである。だって普通の電化製品で欲しい物はないし、何かのパーツみたいなマニアックなものばかり売っていて、私には無縁な物ばかりだった。それから一人でホテルに戻り、疲れていたので眠ってしまった。せっかく東京に来たというのに、もったいない話だ。

 夜になり、8人で六本木の街へくりだす。8人でぞろぞろマップを片手に歩いていたもので、通りすがりのいかにも夜の世界が似合いそうなお姉さんに、

「これって修学旅行のノリじゃなあい?」

と言われてしまった。ムッとしたが、その通りなので言い返せない。やはり見る人が見たら、私たちは田舎者に見えるんだろうなあ。ばっちりスーツで決めてきたんだけどなあ。

 かくして私たちは、目的地の有名なディスコに到着した。中に入ると高級感がただよい、音楽が鳴り響いていた。お客さんはお姉さんが多く、皆ワンレン、ボディコンだった。修学旅行のために皆いっちょうらを新調したというのに、この空間の中では地味この上ない。女の人たちは、パンツが見え隠れしながらお立ち台の上で踊っている。私たちは席で、カクテルなどを飲んでいた。するとどこからか同じにおいがする男の子達が近寄ってきて、

「一緒に飲まない?」

と声をかけてきた。もちろんオッケーである。向こうは6人だった。何でも大学の卒業旅行らしく、熊本出身だという。東京もんではなかった。どうりで似ている雰囲気なわけだ。同じ田舎者同士、話ははずんだ。この後2次会に一緒に行った者もいたが、私は疲れていたのでホテルに帰ってしまった。ここでもせっかくの旅行なのに、もったいないことをしてしまった。
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