看護学校へ行こう
ナースには自己責任が付随する。ところが学生は教えたナースと教務が責任をとってくれるし、間違ったことをしそうになったら必ずストップがかかる。学生は怒られるだけで、責任はあまりない。ナースは失敗したら、もろに責任をかぶらねばならない。このときはナースにさえなれば、自然に仕事を覚え、楽になるものだと勘違いしていた。

 私たちの学校では毎年「樽前山登山」という行事があった。北海道の苫小牧にある山である。そこを毎年頂上まで登るのである。なんでそんな行事があったかは定かではないが、はた迷惑な行事だ。ちなみに雨天中止である。二年生の時は中止になった。だから登ったのは一年生の時だけである。一年生の時は暇だったし、ガキだったからイベントが楽しくて喜んで登ったが、三年生ともなると、実習とレポートで体力は消耗しきっている。ほぼ毎日3時間睡眠だ。勘弁して欲しい。

 「明日は登山」という日の夜、私とかえでは食堂にいた。二人して「絶対徹夜しなければ間に合わないレポート」を書いていた。実習先の課題を二人に出されたのである。それで

「食堂で二人でやろう。」

ということになり、頑張ってしんとした食堂の奥の方で、ひたすら書いていた。

「徹夜した後登山だよ、ちょっと。」

「嫌だねえ、中止にならないかねえ。」

と二人して明日の登山を嘆いていた。完徹した後の登山など、たまったものではない。せめて登山の前日と次の日は実習を無くして欲しいのだが、現実は容赦ない。それに弁当もつくらねばならない。登山が中止になると、休日になる。たくさん眠れる。ということで、かえでと、

「雨乞いをしよう。」

ということになった。
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