看護学校へ行こう
 実習最終日。私は奥さんに、

「ご主人からプレゼントがあります。」

と言い、メッセージカードを私から渡した。カードを見るや、奥さんはわあーっと泣き出した。

「お父さん、ありがとう、お父さん。」

私ももちろんもらい泣きした。奥さんは私に感謝の言葉を言ってくれた。だがそれはBさんの回復過程にうまくリハビリがついていった結果だった。それでも初めて聞く、患者さんのご家族からの感謝の言葉に、私はこの実習を頑張ってよかったと、しみじみ感じた。本当は、もっと前に実習にやりがいを見いださなければいけなかったのだが、何せ遊んでばかりの私だ。三年生になって、ようやく本当の実習ができた。このときは、珍しく私がやる気をだした実習だった。だから、その実習を事例研究にすることにした。

 当時のプレゼンテーションといえば、パワーポイントなどの画像を使うわけではなく、模造紙に極太マジックで表や研究結果を書くという、原始的な方法だった。私の研究発表は、くじ引きで、クラスで一番最後だった。30人全員が研究発表するから、一週間かかる。最初に教務に提出した論文は、あとで読み返すと不足部分や考察が足りないところが目立ち、みんなが次々研究発表している一週間の間で、発表原稿の見直しと、模造紙に研究過程、結果を書いた。発表前日は一睡もしなかった。

 
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