看護学校へ行こう

やっぱり実習は大変

　この頃テレビで「男女七人秋物語り」をやっていた。夏バージョンは一年生の頃で、私は見ていない。一年生の頃はテレビなど立ち見であったから、見る気がしなかった。だが三年生ともなると、一等席でゆっくり座って見られる。ということで、私も見ることにした。この「男女七人」、そりゃあ寮内で流行った。何故にあのさんまがあんなに格好良く見えるのか。鶴太郎も渋い。みんな手塚里美を意識して、髪型を真似する者が寮内で激増したくらいだ。食堂にあるたった一台のテレビの前には、さながら昭和３０年代の、テレビが各家庭に普及する前、お金持ちの家にテレビを見せてもらいに集まる近所の人たちのようである。一～三年生の寮生のほとんどが食堂に集まり、空気が希薄な中、男女七人を食い入るように見た。そして最終回。あの最後のキスシーン。その直後、明石家さんまと大竹しのぶが結婚したから、

「あのときのキスシーンは、本気だったに違いないよね。」

などと言ってはキャーキャー騒いだ。それにみんな番組が終わった後に、「はあ～」とため息をつきながら部屋へ戻っていったから、たぶんみんな考えていることは同じはずだ。

「私もさんまに抱かれてキスしたい。」

である。つかの間、寮生の心が一体となって、同じ体験をするのは楽しいものだ。テレビが一つだけだから、一見不便なようだが、それもまた楽し、である。