看護学校へ行こう

　三年生も後半になると、「管理実習」といって、7週間月曜から金曜までぶっ通しの実習が待っている。この間に一日だけ夜勤実習も経験する。

　私の管理実習先は整形だった。混合の赤田主任に負けず劣らずくせ者なのが、整形の主任、真坂さんである。真坂さんは好き嫌いが激しい。気に入った学生にはめっぽう優しいが、一度ご機嫌を損ねると、最後までちくちく怒られる羽目になる。整形実習に一緒に行ったのは、まきよちゃん、白田、きしどと私だ。この4人で毎日7週間、地獄の日々を送る羽目になってしまった。真坂さんは、ハキハキした積極的な子が好きなのだが、緊張しまくりの私たちは、最初の日、おどおどしていた。で、緊急入院が入り、どういう経緯で入院に至ったか、過去にどんな病気をしたかを聞く「アナムネーゼ聴取」、通称アナムというのがある。すかさず真坂さんが、

「学生で誰かアナムとらないの？」

と言ってきた。初日の午前中である。まだ病棟内のこともわからないし、物品の位置も確認していない。だから患者さんにトイレの場所だとか説明できない。それで、

「あの、まだ慣れていないので、もう少し日にちがたってからにさせてもらえませんか？」

と私たちは言った。とたんに真坂さんの機嫌は悪くなり、

「わかったわ。あなたたち、管理実習、やる気がないってことね。」

と最初から悪印象をもたれてしまった。これでこの先の7週間の実習がどんなものになるか、決まったようなものである。