看護学校へ行こう
ときには患者さんやご家族からナースステーションに苦情が来ることがある。そのときすぐ謝らず、いったん事実を確認した上で、しかるべき処置をとるのが筋である。誤解があったり、中には難癖をつける患者さんやご家族もいる。簡単に謝ることは、こちらに非がなくても認めることになる。スタッフ間でもそうだ。なにかケアレスミスがみつかったとする。それを追求されたとして、自分じゃないのに謝ることで済ませてしまえば、後々大きな責任をかぶることになりかねない。学生の私は、それまでの人生で、親に口答えをすることを厳しく禁じられていた。その癖があってか、とりあえず謝って物事を解決させてしまおうとする。だがきちんと自己主張することこそ誠実な行為なのだ。私はそれをはき違えていた。

 「すみません」と謝り続けた私。毎日怒られっぱなしで萎縮してしまい、ある日清拭用のお湯を、廊下でひっくりかえしてしまう。廊下中水浸しで、主任さんがナースステーションからあわてて出てきて、

「ああ、もう。」

と言っている。モップで廊下中に広がったお湯を拭きながら、私は諦めていた。

 6内の実習は、不合格だった。冬休み、補習を受けることになった。

 寮のみんなは楽しそうに、3週間の冬休みを過ごすため、実家へ帰っていった。私も荷造りをしていた。これから2週間の補習実習を受けるため、下着、白衣、文献など、大量な荷物をつくっていた。
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