看護学校へ行こう
しばらくして、ようやく看護の授業が始まった。最初は看護概念、解剖学、生理学である。看護概念の授業は教務主任の千村先生、通称「チムチム」が教えてくれた。この先生、いい人なんだけど、とにかく落ち着きがない。病棟で働いていたときの名残かどうかはわからないが、やたら歩き回るのだ。今教壇で話していたと思ったら、すぐに黒板に向かう。そして後ろを振り向いて話し始めたと思ったら、黒板の端から端までやたら移動する。そして黒板に書いたものすべてを丸で囲む癖がある。すべて丸で囲まれたら、いったいどれが重要ポイントかわからない。チムチムは授業中、ふと言った。
「これからの3年間は、書いて書いて書きまくりますから。」
のちにこの言葉の意味することがわかるようになる。
解剖学、生理学は、ドクターが病院の診察を抜け出して教えに来た。だからドクターの授業は、重症患者さんが出たり、緊急手術が入ると休講になることが多く、大変ありがたかった。
さて、肝心の解剖学の授業である。本格的な医学知識が学べると思うと嬉しかった。なので、そりゃあ一生懸命授業を聞いた。しかし難解で意味不明である。
「それじゃあ、次のページを読んでください。」
とあてられるが、漢字が読めない。「微絨毛とは細胞の自由面から細胞膜の小突起が飛び出したもので、細胞の自由表面積を増大し、その吸収、分泌に関係あるものである」という文章が、いきなり最初から出てくる。私たちは高校を卒業したてである。高校じゃあ、せいぜい生物で、ミトコンドリアとか、そんな類のものを学んだに過ぎない。「微絨毛」からして読めないので、いちいち先生に
「読めません。」
「わかりません。」
と、聞くことになる。
「これからの3年間は、書いて書いて書きまくりますから。」
のちにこの言葉の意味することがわかるようになる。
解剖学、生理学は、ドクターが病院の診察を抜け出して教えに来た。だからドクターの授業は、重症患者さんが出たり、緊急手術が入ると休講になることが多く、大変ありがたかった。
さて、肝心の解剖学の授業である。本格的な医学知識が学べると思うと嬉しかった。なので、そりゃあ一生懸命授業を聞いた。しかし難解で意味不明である。
「それじゃあ、次のページを読んでください。」
とあてられるが、漢字が読めない。「微絨毛とは細胞の自由面から細胞膜の小突起が飛び出したもので、細胞の自由表面積を増大し、その吸収、分泌に関係あるものである」という文章が、いきなり最初から出てくる。私たちは高校を卒業したてである。高校じゃあ、せいぜい生物で、ミトコンドリアとか、そんな類のものを学んだに過ぎない。「微絨毛」からして読めないので、いちいち先生に
「読めません。」
「わかりません。」
と、聞くことになる。