看護学校へ行こう
単独行動が好きで、人と交わることを好まないように見えたえもっちゃん。人になんと言われようと、寮内で高校のゼッケンつきジャージを着ていた彼女。彼女もやはり26期生を愛していた。看護学校を、愛していた。私は小学校、中学校、高校と、卒業式で泣いたことはない。学校になど、なんの思い入れも持ったことのない私。だけど・・・この看護学校は別だ。涙が止まらない。えもっちゃんのせいだ。そうだ。そう、思おうとしたけど、違う。辛い。このかけがえのない26期生と別れるのがたまらなく辛い。3年前寮に入ったばかりの頃、

「こんな寮生活なんて嫌だ!」

と思った。古くて寒くて汚くて狭い部屋。7人しか入れず先輩にいちいち挨拶しなければいけないお風呂。まずい食事。居眠りばかりの授業。厳しい実習。そんなことが頭の中を駆け巡った。100円の駄菓子で100円パーティーしたっけ。門限破りをして、先輩にばれそうになり、屋根から部屋に侵入したっけ。みんなでワムのラストクリスマスを何度も歌ったっけ。思い出は次々出てくる。3年間同じ釜の飯を食べた仲間と別れ別れになる日がとうとう来てしまった。

 感慨深い卒業式の後、すぐに謝恩会がある。まやちゃんの靴であるが、

「お父さん、パンプスを持ってきてくれた?」

と聞いた。
< 160 / 162 >

この作品をシェア

pagetop