看護学校へ行こう
少しずつ読み進めては先生に教えてもらい、また読み直す。この応酬である。最初の「解剖学」は、ちんぷんかんぷんで終わった。

 長い7時間授業が終わり、早速寮に戻ると、とにかく風呂である。先輩はまだ帰ってきていない。お湯を沸かし、食堂で風呂桶を持って待つ。7人しか入れないから順番を決めた。ずらーっと食事当番以外の一年生がたむろする。風呂場は食堂の隣なのである。入浴し、食事まで部屋で待っていた。寮の向かいが病院だ。私たちの部屋は、もろ病院の正面玄関前だった。何気なく窓から外を見ていると、学生用の白衣を着て、ナースキャップをつけた、二年生の先輩が二人、実習を終えて病院から出てきた。白衣は白地に水色のストライプが入ったパフスリーブのワンピースで、その上に白いエプロンをつける。ナースキャップは右端に濃紺色の二本線が入っている。線の本数は、学年を表すのだ。

「かわいい白衣だよねえ。」

「いいなあ、早く着たいね。」

などと言いながら、憧れのまなざしで見ていた。ちんぷんかんぷんな授業ばかりで、7時間座りっぱなしの私たちは、

「早く実習、行きたいねえ。」

などとのんきなことを言っていた。このときは実習がいかに厳しく、毎回クラスの誰かが泣いて帰ってくることになるなど、想像できなかった。
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