看護学校へ行こう
BGMにかける音楽はみんなそれぞれ趣味が違っていて、私はそれまでほとんどサザンしか聞いたことがなかったから、みんながそれぞれ持ち寄ったカセットを順番にかけるのを聴いて、新しい世界が広がったような気持ちだった。「松任谷由実」や「レベッカ」「BOWY」「バービーボーイズ」などのアーティストの名曲が次々かかる。私はみんなから順番にカセットを借りてはベッドで寝る前に聞き、どんどん新しい曲を覚えていった。そういったアーティストの他にも、ちょっといいなと思う新曲が出たら、自宅から通学している、略して通生の遠山さんに頼んでレンタルレコードを借りてもらい、カセットに録音してきてもらう。それを寮生みんなでダビングして聞いたり、みんなで旧館の一部屋に集まって、歌を歌いながら覚えた。旧館の4人部屋は一年生しかいないから、先輩の部屋からは離れていて、多少大声を出しても大丈夫だった。レベッカの「MOON」や、ワムの「ラストクリスマス」がこの頃新曲で登場したので、随分みんなで歌った。

 こうして寮生活に馴染んできたら、みんな土日に実家に帰らなくなった。寮での友達との交流が、楽しくてたまらなくなってきたのである。
 ある日、クラスで一番活発なたすけが

「みんな!今度の土曜日カラオケパブに行かないか!」

と言った。まだカラオケボックスが無かった時代で、カラオケは他の客がいる前で歌っていた。まあ、それはそれで楽しかったりする。他の客の歌が聴けて、上手だったりへたくそだったりを批評して笑うのも、また一興だった。

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