看護学校へ行こう
看護技術の授業
 看護学校には一応制服があった。一つは白衣だが、これはまだ届いていない。すでに手元にあるのは、体育用のジャージ、それにスーツである。スーツは授業では着なくても良いのだが、院外研修などのときに必ず着る。このスーツが、誰がデザインしたのか、「ちょーダサい」のである。細かな千鳥格子模様だが、離れて見ると、単なるグレーにしか見えない。そして形であるが、スカート丈がふくらはぎの一歩手前くらいの長さと中途半端で、ジャケットはおなかのあたりでしぼってあり、丈が無駄に長い。いったいどこの業者に頼んだか知らないが、この制服を着るのはとても嫌だった。授業中に着てももちろん良いのだが、普段の授業で着ている人はいなかった。じゃあ普段着が決まっているかというと、これまた疑問符なのだ。

 最初の頃こそみんな授業にはちゃんとした服装というか、おしゃれしていた。だが日数がたつにつれ、みんなの服装は乱れていく。何故なら寮と学校がつながっているからである。みんな寮内ではおしゃれなどしない。私などは下はグレーのスウェット、上は黄色いトレーナー、その上に赤いどてらを着ていた。これが私の寮内での定番スタイルだった。ちなみに「どてら」であるが、なぜか寮生全員着ていた。寮内が寒いこともあったが、カーデガンでもなく、ガウンでもなく、「どてら」なのだ。先輩達が着ていたから真似したのだが、気がつけば全員着ていた。どてらは暗黙の伝統と化していた。北海道は、真夏以外は朝晩冷える。真夏など夏休みだから寮にはいない。よって、年中どてらを着ていることになる。夜はパジャマの上にどてらというのがみんなの格好だ。もう、自宅と化しているので、ラフきわまりない。だがそんな私たちでも「さすがにそれはないだろう」という格好をしている人がいた。えもっちゃんだ。
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