看護学校へ行こう
えもっちゃんはちょっと変わっていて、単独行動を好む人だった。私は特定のグループには属さないが、いろんなメンバーの中に加わり、遊んでいた。ところがえもっちゃんは余り遊ばない。いい人なんだけど天然で、本人はまじめなつもりが周囲から見たら面白いのだ。彼女、ある日スーパーに一人で買い物に行った。帰ってくると、スーパーの袋を肘にかけ、右手にあんぱん、左手にコーヒー牛乳を持っている。聞くと帰りに飲み食いしながら歩いてきたとのこと。いくらなんでもうら若き乙女が滅多にそういうことをするもんじゃないだろう。そしてえもっちゃんの寮内での格好だが、高校の時のえんじ色の学校指定ジャージを着ているのだ。しかも思いっきり白地の布に、「三年△組 江本」と名前を縫い付けたままである。えもっちゃんは他の子から「ださいよ」と言われても、三年間その格好を貫き通した。

 こうして私たちの学校内での服装は、どんどん崩れていった。通生は外を歩いて学校に通うから、きちんとしている。しかし寮生はスウェットのままレポートを書き、朝の4時に服を着たまま寝て、登校寸前に目覚め、顔も洗わずそのまま学校へ行ったりした。ちなみに授業は9時からだから、8時55分まで寮にいられる。ただし病院実習の時は、8時に病院に向かう。掃除当番の日以外はぎりぎりまで寝られるからありがたい。で、スウェットで登校したところ、

「そういうだらしない格好で授業は受けないように。」

と教務からおしかりを受けた。だから下だけジーンズに履き替えていた。男の目がないと、女という者は決していつも身だしなみに気を遣っているわけではないのだ。
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