看護学校へ行こう
「あぁ、ここを右に曲がるんだな。」

苫小牧市の標識が見えて、しばらくすると、すぐに病院があった。病院は海のもろ近くだったがそれは海水浴などできるきれいな海などではなく、工業用水が流され、波の荒い淋しい海だった。その向かいが看護学校兼学生寮だ。

「…しょぼ。」

「清香寮」と書いた、コンクリートの門にはひびが入っていて、建物もところどころ壁がはがれている。建って26年たった学校は、一度もメンテナンスなどしていないように思えた。両親は札幌に引っ越すから、私は今日からここの住人になる。寮の前には私たちより先に来て、車から布団や着替えなどの荷物を下ろしている親子が何人かいた。

「あの子も・・・一年生なんだな。」

看護学校に入るのが不本意だったとはいえ、ちょっとわくわくしてきた。二年生の先輩がかわいらしいマスコット模様のエプロンを身につけ、

「どうぞよろしく。こちらです。」

と親切に対応してくれた。先輩の先導に従って、父母と共に布団やら着替え、ラジカセなどを運び入れた。私は26期生である。だから建物も26年たっているわけで、古くて当然なのだ。

 寮と看護学校はつながっている。一学年一クラスしかないから、教室は3つ。他に技術室と物品庫と教務室。これだけである。看護学校は市立病院の付属なので、市の税金から援助を受けて設立されているから、設備投資は最低限に抑えられていた。技術室は教室3つ分の広さで、ここで入学式が行われる。まあ、多目的ホールというべきか。
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