看護学校へ行こう
 こうして初めての技術演習は終わったが、非常に下手くそなので、居残り練習を自主的に行った。みんなナースになりたくて、この学校に入ってきた連中である。私たちの受験倍率は、14倍だったのだ。だからみんな一生懸命練習した。やる気のない者は一人もいなかった。私は大学進学を諦めて看護学校に入学したのだが、医療系を希望していたからそれなりにまじめにやっていた。

 看護技術の授業はどんどん進み、剃毛(ていもう)まできた。手術前などに患者さんの毛を剃るというものである。剃毛は、実際にお互いの毛を剃り合うから、教務に

「脇毛を伸ばしておいてください。」

などと、奇妙なことを言われた。18~19歳の女の子に脇毛を伸ばせなど、あり得ない話である。普通の感覚なら非常に嫌だろう。だが既に風呂場では前も隠さずに堂々としている私たちにとって、なんてことはなかった。剃る部位は、脇と腹だ。腹は産毛を剃るのである。
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