看護学校へ行こう
 さて、演習当日。まずは先生がお手本を見せる。その最初のお手本の患者さん役に、私が選ばれた。上半身はブラジャーだけ。ズボンはへその下、下の毛が見えないぎりぎりのところまで下げられる。それを29人がまわりを取り囲み、じっと見つめる。さすがの私も、ちと恥ずかしかった。ちなみに私は毛は薄い方で、先生に

「ちゃんと脇毛伸ばしてきた?」

と質問された。かくして剃毛のお手本演習が始まったが、先生は説明しながらするので、脇を剃るときは、腕を上げたまま脇をさらけだし、何分も待たされる。寒いし恥ずかしいので、

「早く剃ってくれ。」

と心の中で願う。剃毛はこの時代は床屋さんにあるような入れ物に石鹸の粉を入れ、太い筆のようなもので泡立てて剃る部位に石鹸を塗る。カミソリは二つ折りの本格的な剃刀だ。持ち方は親指と人差し指で刃を持ち、他の指は柄を持つ。先生は何の躊躇もなく、スッパスッパ剃っていった。最後、暖かいタオルで拭いて、終了である。
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