看護学校へ行こう
 看護技術演習は、着々と進んでいった。ある日「排泄介助」の技術演習を行うことになった。ベッドに寝たきりの患者さんの下着を下げ、差し込み便器を当てるのである。これは結構難しくて、きちんと当てないと、布団や衣類が尿で汚染されてしまう。男性なら男性用の尿器があり、陰茎を入れるから尿がこぼれにくい。だが女性は少しでもずれると尿が漏れだしてしまう。先生は授業を進めながら言った。

「次回の演習で、お互いに介助し合い、実際に便器におしっこをしてもらいます。」

私たちは一瞬固まった。尻や前を見られるのはまだいい。しかし「尿」という排泄物を人に見られるのは、いくら釜の飯を一緒に食べている間柄でもかなり抵抗がある。教室はざわめいた。だが先生は、

「患者さんは実際にベッド上でおしっこをしているんですよ!患者さんがどんなに恥ずかしい気持ちで介助を受け入れているか、わかりますか?」

と一喝された。そう言われたら、返す言葉は無い。結局次回の授業は排泄介助をしあうことになった。
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