看護学校へ行こう
最初の子達は緊張していたが、後半になるとみんな慣れてしまって、さっさと排尿を済ませていた。こうしてさくさく演習が進んでいく中、一人だけどうやってもおしっこが出ない子がいた。えもっちゃんだ。えもっちゃんは神経質らしく、ざわめく環境の中で寝たまま排尿できず、30分くらい粘ったが駄目だった。仕方がないと先生も免除してくれ、ナース役の子は空の便器を処理するシミュレーションをやった。こうしてベッド上でおしっこをするという貴重な体験を私たちはした。

 排泄介助の演習を終え、一息ついたところで「経管栄養」という技術演習が待っていた。経管栄養とは、食物が何らかの理由で口から摂取できない場合、鼻からチューブを胃まで通してチューブを固定し、液体の流動食を点滴みたいに流し込んで栄養補給することを言う。それで実際の技術演習だが、もちろんお互い鼻からチューブを入れ合うのだ。これにはさすがに恐怖で凍り付いてしまった。鼻からチューブを入れる・・・。考えただけでぞっとする。いったいどれだけ痛いのだろうか。しかも行うのはど素人の学生だ。手慣れたナースではないのだ。授業の終わりに経管栄養の技術演習の日を告げられ、その日まで私たちはその話題でもちきりだった。誰もが、

「嫌だなあ。」

「こわ~い。」

などと言っていた。だがこれも患者さんは経験されているのである。だから文句は言えないのだ。
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