看護学校へ行こう
 1回目の技術テストの合否が紙に書いて貼り出され、もちろん私は不合格だった。受かった子は居残り練習から解放され、自由の身となる。残った連中で再び練習を始める。土日も残って練習した。ただし採血と経管栄養だけは、実際に行ってはいけない。教務の目の届かないところで危険をともなう技術を行ってはいけないのだ。だから、この二つは準備と施行の真似だけする。そして2回目の再テストが始まった。このときには午前か午後かのどちらかが授業となる。テスト中は、受かった子は編み物などしていた。

 さて、再び私が呼ばれた。今度は「抑制」である。これは手術中など患者さんが無意識に手足を動かさないために、抑制帯で手足を固定するのだ。これも患者さんにきちんと説明しなければいけない。といってもなんと声をかけてよいのか・・・。普通抑制するのは手術前だから、患者さんは意識がない。その辺のシミュレーションはしていず、ただ抑制の練習だけしていたから、私はあわててしまった。それでも患者さんに何か説明しなければいけないので、

「動いてしまわないように、手と足を縛りますね。」

と声をかけた。そこでストップがかかった。「手足を縛る」と表現してはいけなかったのだ。「手足を固定する」ならよかった。なんだかあげあしをとるみたいだが、またしても不合格となった私。2回目ともなると、ほとんどの子は受かっている。私と数名の子は、悲しいかな再び練習の日々である。3回目は授業中にテストはしない。他の子に支障が出るため放課後にテストが行われる。受かった子達は買い物に行ったりファミレスに食事をしに行ったりしている。私たちは非常に惨めであった。
< 63 / 162 >

この作品をシェア

pagetop